本『ハイパーワールド』

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 “仮想現実” における “自閉症アバター" についての本で こんなに読後の感動があるとは思ってもみませんでした。馴染みのない仮想世界の様子が分かることも楽しいし、そこで筆者が自閉症スペクトラムへの考察を深めていく段階がとても丁寧に描かれていて、追体験にわくわくします。

考察のみならず様々な研究結果などが、素晴らしい例えを用い噛み砕いて書かれているので、共感覚シナプスの刈り込み(刈り込み)の関係や ”情報のラッシュアワー”など、「そういうことなんだ!」と腑に落ちて、とても学びが多いことでした。

私は神経定型者(NT: neuro typical) のはしくれだと思いますが、自閉症の方達(非NT)の知覚の特徴、どのように考えるかなどを読んでいると、自分にも同じように感じたと思うことがあったり、自分自身を改めて振り返ったりもしました。また私だけではない多くの人についても思いを巡らしたり、身の回りの捉え方も少し変わった気がします。筆者も書いておられるとおり、私も思わず吹き出した箇所です。

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また、「特に能や茶道のような身体技法の修練を積むなかに展開されている、言語を媒介せずに自分に直接飛び込んでくる世界を、身体動作の繰り返しである稽古によって習得するという伝統には、とても深いものを感じる」という一文は、普段していることをこのように言語化してくだすって…と感慨深いことでした。

さらに、プロローグとエピローグに登場するジョンのことを知っていたこと、筆者の池上さんが米国在住の日本人でいらっしゃることも、共感の多かった理由の一つかもしれません。そういう意味では、夏に母の本棚で見つけた『二つの母国に生きて』にも、日本と米国に生きる者としての共感を強く抱いたことを思い出します。

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書かれたのは1980年代前半でありながら、35年経っても思わず膝を打つエッセイ。また三島由紀夫はじめ様々な文学者との交流もちょっとミーハーな覗き見感覚で読めて、思わず母に譲ってもらった本です。今は文庫になっているようです。

最近は友人に貸していただいている『鬼平犯科帳』シリーズで、就寝前にお江戸の世界に浸っています。気がつくと何と鬼平と同世代になってしまっていました。

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 Daylight savings 制度に翻弄されつつ、とても綺麗な夕焼けをけーと見て幸せのひと時。

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